ボートのオーナー
それはひょんなきっかけでボートのオーナーになることになりました。
知り合いの釣り仲間から船外機用のボートを譲り受けることになったのです。
そのボートは、18フィート(5.5メートル)のFRPのボートでした。
船首の部分がひび割れ穴が開いていました。
また、船首のロープを掛ける十字の木組みも壊れていました。
台風の影響で海が荒れ、浜に打ち上げらた時に傷んだようでした。
それを直してみないかと勧めらたのです。
FRPボートは二重底になっていて三層に区切られていますので、
穴やひび割れを直してやれば問題はないと言うことでした。
修理する自信はありませんでしたが、
このボートが自分の船として、海に浮かぶ姿を想像するとワクワクしました。
直して乗ろうと思いました。そして、譲り受けることにしのです。
代金は、子供さんへ3,000円のチョコレトセットを持参しました。
それから、船の修理勉強に造船所通いが始まりました。
FRPの材質について、溶剤について、硬化剤について。ガラス繊維へ溶剤を塗ったあとの
空気抜きについて、研磨の仕方、型作り…。
色々教わりました。FRP船が出来るまでのあらゆる工程を教えてもらうことになりました。
この時、本気で自分で船を造れるのではないかと思いました。
あまりにも熱心だったので、気の毒に思いFRPの修理材料も格安で分けてくれました。
こうして貧乏船主の改修工事が始まりました。
実際に修理してみると、分かっていた事ですがうまくいきません。
はじめに壊れた箇所を電動サンダーで削ります。
船独特の塗料を剥がし、飴色のFRP材が見えてくるまで磨きます。
そうしないとうまく接合しません。FRPの主材料のガラス繊維布はシャキシャキとハサミで
切れるくらいに加工は簡単です。
しかし、この繊維、針のように体に刺さ
ります。体内に入らないようにと注意をされていました。
この布に溶剤を塗ります。硬化剤の分量を間違うとすぐに乾いてカチカチになります。
何度か失敗を重ねながら、ガラス繊維を張り合わせていき、船の修理を終えることができました。
他に穴が開いていないか確かめましたが見つかりません。海に浮かべるまでは心配でした。
船底塗料を塗り、船首の十字の木組みも完成しました。船外機は中古の25馬力エンジンを購入。
船も車と同じように車検ならぬ「船検」が必要でした。
この時、「船検」は切れていましたが、所有者移転手続きは終了していました。
そこで、「船検」を受けるために備品を揃えることにしました。この船は5名が定員です。
したがって、定員の分の救命胴衣を積んでいなければなりません。
その他、遭難時の発煙筒、消化時のバケツ等、規定に沿った備品を買い揃えました。
これらは専門店があり、一括で揃えることが出来ました。
この時、この海域の海図も購入しました。
たしか当時で6,000円であったと記憶しています。
後にこの海図は釣れた場所と日時を記す「釣りポイントマップ」になりました。
また、イカリ、ロープも購入しました。これら備品を船倉に積み、
いよいよ海に浮かべ船検を受ける時がきました。
「沈んだらどうしよう」とか「エンジンはうまくかかるか」とか心配しながら。
砂浜の海岸に竹を敷き、釣り仲間に手伝ってもらい手押しで海に浮かべました。
見事に船は浮き、エンジンは順調に始動しました。五月晴れの暖かな午後のことでした。
静かで穏やかな海を滑るように走り、無事に船検は合格。
かくして、ボートのオーナーの誕生と相成りました。
ボートの名前は「シーガル」、カモメという意味であるそうでした。
彼女との長い付き合いが始まりました。

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