猫が我が家にやって来た
それは、突然に我が家にやってきました。
学校の帰りに娘が拾ってきた雄の子猫。
その幼気な姿は、家中の人間を「かわいそう」モード一色にしてしまいました。
いつもであれば、いの一番に難色を示す妻が、子猫の健康状態を調べ始めました。
目も開かず、鳴き声もかすれ、毛も生えそろっていない瀕死の子猫。
彼女が難色を示すのには理由があります。
いつも昆虫や川魚、スズメの赤ちゃん等を拾ってくる娘は決まっています。
そして、最後まで面倒をみる人も決まっています。母親の彼女です。
したがって、この子猫が家にいられるか、いられないかの運命は彼女が握っています。
しかし、この瀕死の子猫、彼女の母性を刺激したようです。
どうやら、我が家にいられるようです。
さっそく介抱がはじまりました。
だれもネコを飼った経験がありません。
ましてや、こんな小さな生まれて間のない子ネコをみたこともありません。
猫があまり好きでないというより嫌いだった私は、
後方で家人の様子をうかがっていました。
なぜ、猫が好きでないかと言うと、
小鳥を飼っていたときに野良猫の被害にあったことがあるからです。
無惨な殺され方に憤りを感じ、それ以来猫は好きになれませんでした。
そんな私でしたが、介抱の手際の悪さについ口と手を出したのがウンの尽きでした。
結局、ペットショップに直行させられ、ほ乳瓶、ネコ用ミルク、ネコ用トイレ、飼育用バスケット
などなど、店員さんに言われるままに購入するハメになりました。
コケシに小さな耳が二つ付いたようなほ乳瓶で授乳させると、ネチャネチャという感じで
飲んでくれました。
ハラをさすってやり、オシッコを出させます。ハラがいっぱいになりウトウトと眠り始めます。
満腹になり愛くるしい姿で寝入る子猫。子供たちは、その子猫をさわったりなでたり。
家族みんなで面倒をみることシキリです。
しかし、気付くと家族面々が、この子猫に勝手な呼び名を付けて呼んでいます。
「ゴン!」「トラ!」「ニャーコ!」などなど。
そこで、名前をみんなできめてやることにしました。
トラ毛の猫なのでトラ。有力候補でしたが、おばあさんの名前のようでボツ。
結局、オスのトラ毛で茶色の容姿から妻が「チャー」と名付けました。
以来、この「チャー」君は、我が家の一員となり家族のマスコットになりました。
そして、ネコが嫌いだった私をすっかりネコ好きにしてしまいました。

子猫の成長は、ビックリするほど早く、日一日と大きくなるのがわかっるほどでした。
排便のしつけもネコ自体が清潔ずきなため、
砂場を作ってやるとすぐに覚えました。
ネコ独特のしなやかな動作と、動くものに興味を示す習性は、見る者を楽しませてくれます。
特に、レザー張りの長イスの腰をかける下側をさかさまになって綱渡りのように移動する姿は、さながら忍者のようで、家族の大笑いを誘います。
また、蝶々が家の中を飛ぶのを捕まえようと、のけぞるようにジャンプし、そのまま背中から落ちたり。
ゴキブリを忍び足で捕まえたり。カマキリに鼻をつつかれ悲鳴をあげたり。
その動作やしぐさに笑いがおこります。完全に我が家のアイドルです。
また、チャー君が我が家に来た年には、年賀状の家族欄に登場するようになりました。
川柳風の紹介で「男子誕生」と書いて出すと、勘違いした親戚から「いつ男の子がうまれたか」と電話が入る始末でした。頭をかきながら弁明することしきりです。
私は、すっかりこのチャーが気に入りました。大好きになりました。
彼もその心が分かるのか、座椅子に座っている私の腹の上でゴロゴロと喉をならします。
こうして、彼は我が家の一員になりました。

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