モイカ

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モイカとスットン

モイカが走ります。その衝撃は午後5時すぎに訪れました。

「カラン!」くだんの空き缶が転がりました。道糸はズンズン出て行きます。

何に興奮したのかモイカが走ります。そのスピードは尋常ではありませんでした。
私はてっきり青物魚がゼンゴアジをくわえて走ったものと思っていました。

「きた!きたでー!」興奮気味に言う私に「ウン」とだけ答えて
道糸の出が止まるのを待っています。実に強い糸出しです。青物も真っ青です。

リールはフリーですので、道糸は遙か沖の方までのびています。

「モイカか?」と聞くと「そうや」と。
こんなに引きの強い釣りとは想像していなかったので面食らいました。

ゲンさんはゆっくりとあわてずに竿をたてリールを巻き始めました。

「スットン釣り」のベテランが「ちょっと道糸を引っ張ってみるかのう」と言ってくれました。
ピンと張った道糸の向こうにいるモイカの感触を確かめます。

重量感のあるずっしりとした手応えに「デカイ!」と小声でゲンさんに伝えると

「2キロはある。ここのレギュラーサイズじゃのう」と事も無げに言いました。

なおも竿を立ててモイカを浮かせながらリールを巻き、岸に寄せる作業が続きました。

あまりにも時間をかけるので私は思わず「ゼンゴアジ食うて逃げんかのう」と聞くと、
「大丈夫じゃ。あいつらシッポの先までゆっくり食らいよる」との答えです。

チョットでも沖に向かう気配があれば、道糸の
テンションを緩めました。

そんなやり取りがあった後、ついにあの
「スットンマシン」の登場となりました。

「もうよかろう。」と言ってスットンを道糸に掛けはじめました。そして、装着し終わると竿を立てて


スットンを海中へと送り込みました。なおも道糸にテンションをかけながら。

しばらくすると、道糸がフッとふけます。じっとしていると、モイカが沖に向かって引っ張るのか
道糸はまたピンと張ります。

また、竿を立ててスットンを送り込む。道糸がまたフッとふける。

こんな作業を3、4回していると、道糸のフケがなくなる時がきます。

そのとき、「かかったのう」と言ってリールをさっきと同じようにゆっくり巻きはじめました。
あくまでもモイカを怒らせないようにゆっくりと。

しばらくすると、10メートル沖にモイカが浮きました。

なおも慎重にリールをユックリと巻きます。モイカは抵抗らしい抵抗は見せませんが、
それでもたまに沖に向かって逃げようとします。

しかし、ドラグを使いながらテンションを最大限掛けながら岸へと寄せてきます。

5メートル、3メートル。モイカが近づいてきます。

2メートルくらいになった時、ボラの掛けバリのついた竿を右手に持ち、
モイカのかかっている竿を左手で操作します。

そして、ボラの掛けバリをモイカより沖に投入し、タイミングよくモイカを掛けます。

その格好は、さながら二丁拳銃使いのガンマンのようです。

「コイツは重いのう」と言いながら釣り上げたモイカは2.2キロの化け物のようなイカでした。

モイカの取り込みは最初は非常に難しいです。

私も手前まで寄せてきたモイカを何回となく逃がした経験がありあす。
そこで、モイカの取り込みのコツをまとめてみました。



第一段階は、
モイカを興奮させないように少しずつ岸に寄せる。寄せながらモイカを海底から浮かせる。
これをゆっくり時間をかけておこなうのが最初のコツである。その間、アジの大きさにもよるが、
3分から5分かける。
 
モイカははじめにアジの頭に近い背中の延髄をかみ切る。そして、ゆっくりアジの頭が落ちるまで
肉を食べはじめる。そしてシッポまでのアジの身を食い尽くす。

その食欲はすさまじく食い気がピークに達するとアジを捕まえて離さない。どん欲である。
15分から20分かけてアジを食べる。

こんなモイカの習性を利用して生まれたのが「スットン釣り」ではないかと思う。
そうでないとステンレス仕掛けのスットンが近づけばアジを離して逃げるはずである。

第二段階は、
いよいよ「スットン」を道糸にかける。竿をたてスットンが海中に入るのを見届け、道糸には
テンションをかけ続ける。しかし、モイカが興奮して走り出さないない程度にである。

充分注意が必要である。走らせるとバレル確立が高くなる。

スットンはすぐにはモイカのところにはいかない。スットンの重みで道糸に弛みができるので
少しずつ近づけるイメージでやる。

こんな感じである。テンションのかかった道糸がフッとふけるようになる。
このときが最初の弛みである。再度少しずつ道糸にテンションを掛ける。道糸がふける。
少し間をおいてまた糸ふけをとる。この作業をモイカを興奮させない程度のテンションで行う。

そうすると、ある時点になると、糸ふけがなくなる。このとき、スットン仕掛けがモイカの体の
どこかに到達している。この状況にならないとモイカはかからない。

はじめのころは、この感覚が分からずスットン仕掛けがモイカまでいっていないままで
巻き上げて手元で取り逃がすこたが再三であった。

第三段階は、
仕掛けにかかったモイカの取り込みである。タモ網ですくう人がいるがオススメできない。
理由は一発ですくえなかった時、仕掛けのハリがタモ網にかかりモイカを逃がしてしまう。

やはり専用のギャフを使うか、別竿にボラ仕掛けバリを用意するといいと思います。
充分に岸に寄せてからボラの掛けバリを少しモイカより沖めに投入して掛けます。
タイミングよくかけます。

あとは、リールを巻き上げて取り込み終了です。



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