モイカ釣り
かくして私とゲンさんは、モイカ釣りを始めました。
投げ竿一本ずつにゼンゴアジをくくりつけて海に投げ込みました。
モイカ釣りの本には、死んだアジにはモイカはのらないとありますが、そんなことはありません。
アジをゆっくり海底に沈めてやると、沈む途中でものるし海底でもモイカはやってきます。
この時期の沿岸部は、海藻のホンダワラがびっしりと生えています。
その間をかき分けて遠投するのは少々技術を要します。
この藻は、モイカの産卵に必要です。
また、ふ化したイカの子供たちのエサになる小魚が豊富にあるのも藻場です。
近年護岸工事などの影響で藻が少なくなっています。モイカの産卵は春3月から7月にかけて
幅広くおこなわれるようです。

したがって、産卵のために深場から
浅場に来るこの時期がモイカ釣り
の本番になります。
また、モイカは、産卵が終わるまで
オス、メスが一緒にいるそうです。
モイカの寿命は一年で産卵後は死
んでしまいます。
ふ化したイカは、紅葉を向かえる秋には手のひらサイズになり、数釣りが楽しめます。
私は歩きながらホンダワラの生えた海の底を見ていました。南の海独特の熱帯魚のような
色とりどりの小魚が泳いでいます。
そして、何気なく海面に目をもどした時、茶色をベースに黒がちの物体があきらかに
潮の流れと反対の方向へ泳いでいるのが見えました。
それがイカであること気付くまでに時間はかかりませんでした。
岸から6,7メートル沖の水面を悠々と泳いでいたのです。
思わず私は、「イカ!イカじゃ!」と叫んでいました。
ゲンさんは小走りに近づき、イカを確認すると、車にとって返しました。
車のトランクから3メートル足らずのキス竿らしき竿を持って戻ってきました。
竿をのばしながらゆっくりとイカを追いかけます。
道糸の先には、大きめの三つ叉になったボラの掛けバリが付いています。
取り込み方が少し飲み込めました。ものも言わず、ボラの掛けバリをイカの泳ぐ
3,4メートル沖に投げ込みました。
そして、リールを巻きながら、イカの進行方向を見定めて、
ボラの掛けバリの水深を目算しながら、イカを掛けるタイミングを測っていました。
私はその手際の良さに関心しながら、イカが採れるよう念じていました。
一発勝負の読みは的中し、ボラの掛けバリはイカの胴の部分を直撃しました。
私は思わず「ウオー!やったー!」と興奮して叫んでいました。
イカは逃げようと抵抗しますが、方向を完全に支配されてしまっているので
やや観念したように寄ってきました。
そして、弱ったところを見定めて一気に巻き上げます。
黒いスミをはきながらあがってきました。
モイカの大きさにまずビックリしました。
海を泳いでいる時には、大きさは分かりませんでしたが、
こうして目の前で見ると、とてつもなくデカいイカです。
胴の長さは40センチを超えています。足の長さをいれると90センチちかくあります。
重さは、1.2キロ。目は、大振りのたこ焼き一個くらいの大きさはあります。
私はなお興奮して「やったなー!」というと
「まだまだ、こまい(小さい)のう。この倍くらいのヤツがおるけん」との返事。
「この倍!」素直にゲンさんの言うことが信じれました。
ゲンさんは、目と目の間にナイフを入れ、生き締めにしました。

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